肛門科医のつぶやき

2019.07.15更新


 渡邉医院では裂肛に対しての基本的な手術術式は側方皮下内肛門括約筋切開術(LSIS)です。でも慢性の裂肛で瘢痕が強く、肛門が硬い状態になっていたり、以前痔核根治術など肛門の手術を受けた患者さんが肛門狭窄を起こしてしまうことがあります。こういったLSISではどうしても肛門の緊張が取れないと判断したり、術後の狭窄で、肛門上皮そのものが少なくて肛門に狭窄を起こしている場合は狭窄を解除するために皮膚弁移動術(SSG法 sliding skin graft)を行うことがあります。
 SSG法は、裂肛部分や瘢痕で硬くなった部分を切除して、狭窄を解除した後に、切除した部分の粘膜と皮膚を縫合します。そしてその外側に減張切開を加えて皮膚弁を作り、その皮膚弁を肛門管内に移動させる手術方法です。
 実際の手術方法をお話しします。
1) まず肛門潰瘍やこのためにできた肛門ポリープや皮垂(skin tag)を切除します。
2) 硬く瘢痕化した内肛門括約筋の一部をメスで切開して肛門の狭窄を解除します。狭窄を解除する程度ですが、前回お話したLSISのときと同様に、私の指が2本入る程度に狭窄を解除します。この時、アイゼンハンマー氏型肛門鏡を入れて広げ、メスで切開すると必要以上に切開せずにすみます。これもLISIの時と一緒です。
3) 十分に狭窄を解除できたら次は粘膜と皮膚の縫合にはいります。この時に使う糸は、バイクリルと言って自然に溶けて吸収する糸を使っています。だいたい3~4か所粘膜と皮膚を縫合していきます。糸をかける際に、粘膜の方は皮膚と比べて組織が弱いので粘膜の方は少し大きくとって縫合していきます。少し筋層にかけることで術後早期に糸が外れてしまうことはありません。
4) 次は皮膚弁の作成です。粘膜と皮膚を縫合すると、その外側は少し突っ張ったような状態になります。この緊張をとるような要領で皮膚を切開していきます。皮膚弁は真正面、真後ろは避けて左右どちらかにずらすようにしています。真後ろの6時の方向でSSGを行うと治癒した後、縫合した部分が輪状に瘢痕を残す可能性があり、そこが突っ張ったような違和感を残してしまうことがあります。こういった状態にならないようにする必要があります。渡邉医院では左側臥位で手術を行うので、左にずらしています。
5) 最後に十分に狭窄が解除されているかを確認して、皮膚弁をつくることでできた皮膚欠損の部分の出血の有無を確認して、出血に対してはバイポーラによる凝固止血をして手術を終了します。
このようにして強度の肛門狭窄や瘢痕で硬くなった裂肛の手術を渡邉医院では行っています。

投稿者: 渡邉医院

2019.07.14更新


 今回は、痔瘻に対しての痔瘻根治術について現在の渡邉医院の標準的な手術方法をお話したいと思います。
 痔瘻根治術を行う時に大切な相反する要素があります。それは、根治性と機能温存です。根治性を追求すると機能温存が失われる。反対に機能温存を追求すると根治性が失われる。この相反することをしっかり考えながら、患者さんにとって最も良い手術を行っていくことが求められます。
 痔瘻根治術は基本的に二つの手術に分けることができます。それは瘻管切開(fistulotomy)と瘻管摘出(fistulectomy)です。

 瘻管切開(fistulotomy)

瘻管切開は、瘻管の前壁を切開して開放創にして、後壁は残しておく手術です。
 長所:①手術手技が簡単明快で、手術時間が短い
    ②根治性が高い
 短所:①瘻管上の皮膚、筋肉、結合織などの全ての組織が開放創となる
    ②連続した溝状の瘢痕を残す
    ③部位や深さによって、機能障害をおこすことがある
    ④瘻管を通すゾンデで偽瘻管をつくる可能性がある
 適応:炎症が強く残っている場合
    Ⅰ型やⅡ型の比較的浅い痔瘻

 瘻管摘出(fistulotomy)

瘻管摘出は、痔瘻の二次口から切除し、原発口に向かって瘻管を切除摘出していきます。
瘻管摘出にはcoring out(くり抜き法)と瘻管を摘出したあと開放創にしたり、肛門管内を縫合閉鎖する方法などがあります。
長所:①瘻管を覆っている組織が温存され、連続した溝状の瘢痕を残さないため、変形や機能障害が少ない
   ②筋肉と瘻管の走行が解りやすい
短所:①瘻管の炎症が強い場合、組織が脆弱でちぎれやすい
   ②手術時間がかかる
   ③再発の可能性が瘻管切開より多い
適応:括約筋切断による機能障害を起こす可能性がある場合。
Ⅲ型の痔瘻に対して。Ⅱ型でも前方や側方の痔瘻。
このように瘻管切開と瘻管摘出には長所短所があり、それらを良く理解してどういった
手術を行うことが最も良いのかを判断する必要があります。

 渡邉医院の基本的な痔瘻根治術

 渡邉医院では、基本は瘻管を摘出して、創は開放創にする手術を行っています。
では実際にはどのように手術を進めていくのかをお話します。
1) 二次口周囲にメスを入れ、瘻管を摘出する切り出し部分をつくる。
2) ハサミやメスで瘻管をくり抜くように瘻管を剥離していく。
3) この際に創の両側をコッヘルで挟み、両側に広げ、肛門外に引き出すように引っ張ると、原発口がはっきりと確認でき、瘻管を剥離切除していく部分が解りやすくなります。また二次口部分を把持しているコッヘルを引っ張ると、原発口がへこみます。このことでも原発口の部位の確認ができます。
4) 原発巣、原発口を残さないように切除します。最近ではあまりしていませんが、側方や前方の痔瘻の場合は肛門管内は縫合することがあります。
瘻管を摘出切除した後は、出血の有無を確認して、出血している部分は止血していきます。バイポーラによる凝固止血で十分に止血可能です。
シートン法という痔瘻を輪ゴムで治していく方法がありますが、これは二次口から原発口にシートン法用の輪ゴムを通して徐々に徐々にゆっくりゆっくり絞めていって瘻管を切開する方法で、ここでいう瘻管切開の一つの方法です。
このように渡邉医院では痔瘻に対しては、基本的には瘻管を摘出して開放創にしています。そして必要な部分は縫合したり、場合によってはシートン法を加えながら、さまざまな方法を組み合わせて手術をしています。
 次回は裂肛の手術についてお話しようと思います。

投稿者: 渡邉医院

2019.07.07更新

渡邉医院で行っている内痔核に対しての痔核根治術についてお話します。
渡邉医院では内痔核に対しては基本は高位結紮切除術・半閉鎖式を行っています。
 1998年に出版した「渡辺肛門科 標準手術術式」で私が描いたイラストを使って内痔核の手術をお話したいと思います。
 渡邉医院では1%塩酸プロカインによる局所麻酔で手術を行っています。
 1.十分なストレッチング
局所麻酔を行った後、指を使ったり、肛門鏡を使って十分なストレッチングを行っています。これは内肛門括約筋の緊張が強いと術後の痛みが強いというこれまで調べてきた結果からくるもので、術前に十分にストレッチングをすることで、内肛門括約筋の緊張をとって、術後の痛みを軽減させるという意味があります。また十分ストレッチングすることで肛門が十分に広がり、手術の視野がしっかり確保できることにもなります。
 2.内痔核を切除するためのデザインを考える
 内痔核の性状は、患者さん一人一人違います。患者さんの持つ内痔核をどう剥離して切除したらいいかのデザインを考えます。このデザインをどうするかが一番重要だと考えています。どう皮膚を剥がしていくか、どの範囲まで剥離していくかなど、手術を始める前に頭に思い描き、手術終了時の傷の具合をイメージします。それが終ったらいよいよ手術を始めていきます。
 3.ドレナージの切除範囲を決める
内痔核のある部位の肛門縁とそこから少し離れた部分、約2㎝の部分の2箇所をコッヘルで把持します。ドレナージをつくる部分です。
 4.皮膚の剥離
把持した外側のコッヘルから肛門縁を把持したコッヘルまでドレナージ創として皮膚を剥離していきます。花びらの形の様に皮膚一枚を剥離していきます。花びらの形の様に皮膚に切開を入れると、肛門縁から離れたほうのコッヘルを手前に引っ張っていくと、それだけで皮膚は剥がれてきます。ところどころ突っ張る部分は切除し、肛門縁まで皮膚を剥がしていきます。ジョキジョキ切らずに剥離するので出血もあまりありません。肛門縁まで剥離できれば、まず一度出血の有無の確認をしています。止血の際はバイポーラ凝固止血器での凝固だけで十分止血可能です。
5.内痔核の剥離
肛門縁まで皮膚が剥離終わったら内痔核の剥離に入ります。その際に、肛門縁の創を2本のコッヘルで把持して左右に広げることで、内痔核の剥離するラインがはっきりします。内痔核の剥離は、筋層に切り込まないように注意して、粘膜と内痔核を形成している静脈瘤のみを剥がしていくといったイメージで剥離を進めていきます。内痔核を剥離していくと、mucosal suspensory ligamentという靭帯が出てきます。この靭帯を切除していくとで、内痔核を含めた粘膜が、ズルズルと肛門の外に引き出すことが出来ます。そのようなことを繰り返していくと、内痔核の根部まで綺麗に剥離することができます。
 ここで、靭帯を切断して内痔核を形成する静脈と粘膜だけになる程度まで周囲の組織から剥離することも、術後疼痛の緩和に影響すると考えています。周りの筋層や靭帯などを含めた「塊」としたまま根部を結紮することも術後の疼痛の原因になると考えています。また内痔核を切除した後の断端が少なければ、晩期出血を起こす可能性も低くなると思います。できるだけ根部結紮する部分は少なくすることが大切だと思います。
 6.根部結紮
十分に内痔核を剥離した後に内痔核の根部を糸で結紮します。この際は貫通結紮をしています。この根部を結紮した糸で、肛門上皮を連続縫合で半閉鎖していくので、片一方は長くして根部を結紮します。結紮した糸で、根部結紮した部分から少し外側に約5mmのところにもう1回糸をかけて根部結紮しています。これは剥離した粘膜の弛みや肛門上皮の弛みを中の方に引き込んで皮垂が出来ないようにする目的で結紮しています。
 また内痔核を複数切除する場合は、この内痔核の根部を結紮する高さを少し変えて、同一面上に結紮部位がならないようにも工夫しています。同一面上に結紮部分が来ると、術後の肛門の狭窄になる可能性があるからです。
 7.半閉鎖
 根部結紮が終ったら最後に肛門上皮を連続縫合で閉鎖していきます。根部結紮した剥離された内痔核は直ぐに切除せずにそのままにして、半閉鎖していきます。これは内痔核を切除せずそのままにしておくことで、これを少し引っ張ることで、半閉鎖する部分の視野がしっかり確保でき、縫合しやすいからです。根部から肛門縁まで縫合した後に剥離した内痔核を切除します。
 8.創の形大きさ、出血の有無の確認
最後にドレナージ創の大きさや形を確認します。どうしてもドレナージ創が小さすぎると、先にドレナージ創が治ってしまい、肛門内の傷が治りきらずに取り残されてしまうからです。どちらかと言えば小さすぎるよりは大きいほうが具合よく治っていきます。ドレナージ創が大きいからと言って、痛みが強くなったり、肛門狭窄の原因にはなりません。最後にドレナージ創や根部結紮した部分からの出血が無いかを確認して手術を終了します。

投稿者: 渡邉医院

2019.04.14更新

「輪ゴム結紮法で痛い理由」

輪ゴム結紮法とは

内痔核の治療方法に輪ゴム結紮法という手術方法があります。
内痔核の根元に輪ゴム結紮法の輪ゴムをかけて、内痔核に行く血液の流れを遮断して、内痔核を壊死脱落させる、腐ってとるという方法です。

輪ゴム結紮法の適応

輪ゴム結紮法の適応は、排便時に内痔核が脱出するも過ぎに戻る第Ⅱ度の内痔核や、脱出しても自然に戻らず、指で押し込む第Ⅲ度の内痔核。またされに悪化して脱出したままで、戻すことが出来ない第Ⅳ度の内が適応ですが、いずれも輪ゴム結紮する道具の輪っかの中に入る程度の大きさが適応になります。また、肛門上皮といって、肛門の出口から約2~3cmほど奥まで、皮膚の部分があります。この肛門上皮の部分の脱出が大きな内痔核は適応になりません。一番輪ゴム結紮に適した内痔核は、内痔核ができる粘膜部分だけが脱出してくる内痔核です。ですから静脈瘤型の内痔核よりも、粘膜脱方の内痔核の方がより良い適応になります。
輪ゴム結紮する際には基本的には麻酔はしなくてもできます。無麻酔下で行います。また筒型の肛門鏡を使って、内痔核をよく観察しながら輪ゴムをかけていきます。ですから適応をしっかり選んで、適切に輪ゴム結紮すると痛みはほとんどありません。

輪ゴム結紮法で痛みがでる二つの理由

 ではどんな時に輪ゴム結紮をして痛みが出てしまうのかです。
この理由には大きく二つあります。

一つ目の理由

一つ目は、先ほど輪ゴム結紮法の適応でお話しましたが、肛門上皮の脱出が大きな内痔核に対して輪ゴム結紮をしてしまい、肛門上皮に大きく輪ゴムがかかってしまった場合です。肛門上皮の部分は痛みを感じる部分です。ここに輪ゴムがかかってしますと痛みが強く出ます。また輪ゴム結紮の適応である内痔核に輪ゴムをかけても、この肛門上皮に輪ゴムがかかってしまうと、痛みが強く出ます。ですから、輪ゴム結紮が出来る内痔核かどうかをしっかり見極めることが一番大切です。また輪ゴム結紮する際には、肛門上皮に輪ゴムがかからないようにかける技術が必要になります。肛門上皮に輪ゴムがかかってしまうと痛みだけでなく、内痔核が壊死脱落した後に、肛門上皮に傷がのこり、裂肛様になったり、深く潰瘍がのこり、輪ゴムが脱落した後も、排便時や排便後の痛みが残り、場合によってはその痛みが強くなり、再度手術が必要になる場合があります。

二つ目の理由

二つ目は、内痔核を大きくつまんでしまい、筋層まで輪ゴムがかかってしまった場合です。内痔核は粘膜の下にできます。ですから輪ゴムをかける場合は、筋層に輪ゴムがかからないように注意深く輪ゴムをかける必要があります。筋層にまで輪ゴムがかかると、痛みだけでなく、輪ゴムが脱落した際に内痔核の根元から、動脈性の出血を起こしてしまうことがあります。

輪ゴム結紮には正しい適応と正しい手技が必要

このように、輪ゴム結紮法は比較的簡単にできるのですが、輪ゴム結紮が出来る内痔核かどうかの適応を間違ったり、輪ゴムをかける場所、そして深さを誤ると輪ゴム結紮後の強い痛みや場合によっては再度の手術を要したり、また動脈性の出血を起こす可能性があり、慎重に適応を選び、正しい手技で行わなければなりません。決して輪ゴム結紮法は万能の治療方法ではありません。

投稿者: 渡邉医院

2019.04.14更新

シートン法とは

痔瘻の手術方法にシートン法という方法があります。痔瘻の瘻管に輪ゴムを通して少しずつ絞めていき、最終的に痔瘻を治していく方法です。
基本的には二次口、瘻管、そして原発巣、原発口を取り除く方法なので、通常の痔瘻根治術、例えば瘻管摘出術や瘻管開放術などと同じと考えていいと思います。

痔瘻根治術とシートン法の違い

痔瘻根治術の場合は、一期的に切除する方法ですが、シートン法は瘻管に通した輪ゴムを少しずつ絞めていき、時間をかけて痔瘻根治術をするというイメージです。
ただ、このシートン法を行う場合には、確実に原発口、原発巣そして瘻管に輪ゴムを通すことが必要です。

原発口、原発巣をしっかり処理することが重要

痔瘻を根本的に治すには、やはり、原発口、原発巣をしっかりと処理する必要があるからです。
輪ゴムが二次口から瘻管を通り、原発巣、原発口に通っていないと、痔瘻は完治しません。したがってシートン法を行う時は、原発口、原発巣をしっかりと見極めることが必要になります。
また、早く治そうとして、輪ゴムを強く縛ってしまうと痛みが強く出てしまいます。痛みが出ない程度に、ゆっくりゆっくりと絞めていくことが大事です。

シートン法で痛みが出る場合

時々、痔瘻に対して輪ゴムによるシートン法を受けた患者さんで、痛みが強くてつらいと、受診される患者さんがいます。そういった場合の多くが、輪ゴムを強く絞められた患者さんです。そういった場合には、輪ゴムを入れ替えて、ゆっくりと、ゆるめに絞めていくか、二次口から原発口まで輪ゴムがかかっているので、この時点で一期的に痔瘻根治術をしてしまうなどの方法があります。

シートン法は麻酔が必要か?

一番初めに輪ゴムを通す際には麻酔が必要です。渡邉医院で行う時は、局所麻酔で行っています。ただ、いったん輪ゴムを通した後は、時々新しい輪ゴムに替えていくのですが、その際は麻酔をしなくても交換することが出来ます。

シートン法はゆっくりゆっくり

シートン法を行う時は、ゆっくりゆっくり、痛みが出ないように輪ゴムを絞めていき、時々新しい輪ゴムに交換しながら、2~3か月かけて治していきます。
深い痔瘻などの場合は半年ほどかけながら治していくこともあります。ですから、患者さんには、「肛門に輪ゴムのピアスをしている感じです。」と話しています。このようにシートン法は時間をかけて治していく方法です。シートン法のメリットは、輪ゴムを通すだけなので、痔瘻根治術のように大きな傷ができません。また痛みがないので、手術後から直ぐに日常の生活や仕事ができることです。痔瘻根治術を行った場合も、皆さんが想像しているのとは違い、痛みは楽です。シートン法はそれ以上に痛みに関しては楽に治していくことが出来ます。
また、シートン法は輪ゴムを通すだけなので、手術の際の侵襲、体に与えるダメージが少なくて済みます。そのため、基礎疾患に潰瘍性大腸炎やクローン病などを持っている患者さんが痔瘻になった場合、通常通りに痔瘻根治術を施行した場合、傷の治りが悪かったり、場合によっては直りだけでなく、傷そのものが悪くなったりします。また基礎にある潰瘍性大腸炎やクローン病が悪化することがあります。こういった患者さんには侵襲の少ないシートン法を用いることがあります。このように、患者さんの基礎にある疾患や社会的な背景などを考えながらシートン法は行っていきます。

投稿者: 渡邉医院

2018.11.25更新

肛門の手術を行った後の経過で、とても大切なことは、術後の出血、疼痛、そして排便の管理です。この三つが、手術後とても大切なことだと考えています。
まず痛みです。
裂肛の術後の疼痛ですが、裂肛の手術は排便時の痛みをとることが一番の目的です。ですから、裂肛の手術をした後、排便時の痛みはスッと取れます。排便時の痛みが強かった患者さんほど、術後の排便時の痛みは楽になります。
痔瘻の場合は、どうしても排便時の痛みはあります。でも痔瘻の根治術を行った約60%の方は、術後最初の便の痛みはなかったと答えてられます。
どうしても排便時の痛みがあるのが、内痔核に対しての痔核根治術後の排便時の痛みです。ただ、普段は痛みがなく、排便時の痛みがあるのですが、術後7~10日目を過ぎると、排便時の痛みもスッと楽になります。また排便時の痛みの程度は、内痔核の切除個数にも関係しています。1か所の人、2か所の人、3か所の人を比較すると、1か所の人は2か所以上の人と比べるとずいぶん楽です。2か所と3か所の人を比較すると、排便時の痛みに差はありません。1か所ですむか、2か所以上になるかで排便時の痛みに差がでてきます。
次に出血ですが、
裂肛、痔瘻に対して手術をした場合は、術後24時間以内、特に術後3時間以内の早期出血がなければ、その後の出血で、麻酔をしてもう一度止血術をしなければならない出血はまずありません。
内痔核では、この術後24時間以内、特に3時間以内の出血以外に、術後7~10日目頃に内痔核の根部の動脈の根部を結紮した部分からの晩期出血があります。この晩期出血が起きる時期を過ぎると、再度麻酔をして止血しなければならないような出血はまずありません。
肛門の手術で一番患者さんにとっての不安が、この出血です。
さて、最後の排便の管理ですが、これが一番大切で、手術をして治った後でも一番大事なのが、この排便です。どうしても頑張っている時間が長かったり、便秘が続くとまた再発の可能性が出てきます。排便の調整が肛門疾患の発生、再発を防ぐのに最も大切だと思います。
肛門の手術の後は、どうしても「便をすると痛みがあるのでは?」「出血したらどうしよう?」と思うとどうしても排便することが怖くなり、便が出にくくなってしまうことがあります。この場合は、緩下剤を飲んで楽に便が出るようにしていくことが必要です。排便時の痛みが楽になり、出血が少なくなると、おのずと便の調子もよくなってきます。便の状態で、緩下剤を減らしていけばいいです。また、特に内痔核の手術をした場合、肛門の状態は正常ではありません。どうしても便の出方は悪くなると思います。傷が治り、正常の肛門の動きをするようになると、これもまたおのずと気持ちよく便が出るようになります。このように、排便時の痛みが楽になり、傷が治っていくまでは、必要に応じて緩下剤を使っていく必要があると考えます。
以上のように、肛門疾患の術後は、術後の出血、疼痛、そして排便の管理がとても大切になります。

投稿者: 渡邉医院

2018.11.25更新

 内痔核に対しての手術方法は、時代とともに変わってきました。
渡邉医院でも、祖父が渡邉医院を開設してからもうすぐ90年になります。祖父の時代、そして父の時代、そして私の時代と、時代とともに内痔核に対しての手術方法や治療方法は随分変わり、進歩してきました。
 まず、祖父の時代は、内痔核に対しての手術方法は、ブラーツ法という方法での手術だったようです。実際、祖父が手術をしているところを見たことはありません。父が祖父の手術に関して話している内容から推測して、祖父はブラーツ法だったと思います。
 ブラーツ法は脱出してくる内痔核を鉗子で挟み切除した後、創面を縫合するという手術方法です。今ではほとんどされていません。
 内痔核に対しての手術方法がガラッと変わったのが、父の時代です。ミリガンモルガン法と言って、現在行われている基本となる、結紮切除という手術です。私の父は、このミリガンモルガン法、結紮切除術を知って、「目から鱗だった。」と言っています。内痔核を根部まで剥離していき、内痔核の根部、動脈を結紮した後内痔核を切除するという手術方法です。現在の内痔核に対しての手術方法の基本となる手術術式です。肛門科をする以上、この結紮切除術はしっかりマスターすることが肛門科医となる必要最低限の条件だと思っています。
 この高位結紮切除術をさらに進歩させたものが、半閉鎖式です。内痔核を根部まで剥離して、結紮して切除した後の、傷が出来た肛門上皮を縫合して、肛門の外側のドレナージ創は残しておくという方法です。
 現在、私が行っている手術はこの高位結紮切除術・半閉鎖式です。その閉鎖方法を工夫したり、ドレナージ創をどう作るかなど、まだまだ改善するところがあると思っています。
 こういった根治術の変遷の中に、輪ゴム結紮法など、以前からある手術方法が内痔核の大きさや性状をみながら行われています。
 こういった内痔核を切除するといった手術方法の流れを大きく変えたのが、ジオンという痔核硬化剤の誕生です。硫酸アルミニウム・タンニン酸水溶液を内痔核に局注して、内痔核を縮小退縮させていく方法で、四段階注射法という方法で痔核硬化療法を行う方法です。これまで手術をすることで、どうしても肛門に傷を付ける、そういった治療方法から、内痔核に対して痔核硬化療法で、これまで手術をしなければ治らなかった内痔核を治すことが出来るようになりました。傷が出来ないので、患者さんにとってはいたみがなく、本当に楽な治療方法です。ただ、このジオンによる痔核硬化療法はどんな内痔核でも治すことができる万能の治療方法ではありません。ジオンによる痔核硬化療法で治る内痔核かどうかをしっかり判断して、適応を決めなければなりません。適応を間違えると、内痔核は治っていきません。また、痛みは伴いませんが、手術を治すところを注射で治す。注射した部分では、痛みはありませんがものすごい侵襲がかかっているということです。しっかりと経過を診ていくことが大切です。
 このように内痔核に対しての手術方法や治療方法は大きく変わり、進歩してきています
。でもそれぞれのメリット、デメリットをよく理解して、今ある内痔核を治すのには、どの治療法が最も適しているのかを、しっかり見極めていくことがとても大切で重要となってきます。
 自分が持っている内痔核がどんな内痔核か?そしてその内痔核を治すには、どの治療方法が最も適しているのかを肛門科医と相談しながらしっかり治していくことが必要だと思います。そういったいみからも医師としっかり話し、納得いく治療を受けてくださいね。

 

投稿者: 渡邉医院

2018.10.07更新

裂肛の手術について、今回はお話したいと思います。
裂肛は、肛門上皮といって肛門の出口から約2~3㎝ほど奥に皮膚の部分があります。この肛門上皮に傷がつく病気です。
便秘で便が硬かったり、反対に下痢のときにも傷がついてしまうことがあります。
裂肛は初めは転んだ時の怪我に似ていて、転んだら怪我をする。転ばなければ傷は治っていく。といったように、便の具合で肛門上皮に傷がつく。
でも便の状態が良ければ自然に治っていきます。ですから、初期の裂肛は、どちらかといえば、便の状態をよくすることで治っていきます。
ただ、切れたり治ったりを繰り返していくうちに、裂肛の状態は悪くなり、慢性の裂肛になっていきます。
裂肛が慢性化していくとどうなるかですが、切れると痛い。痛いと肛門の内肛門括約筋という筋肉が締まる。切れたり治ったりすることで、段々この
内肛門括約筋の緊張が強くなってしまいます。肛門の緊張が強くなり、しまりが極端に強くなってしまします。また、裂肛が原因で、裂肛の外側に皮垂
といって、皮膚のしわが出来たり、また裂肛の奥に肛門ポリープが出来てしまいます。こうなってしまうと、裂肛の根治術が必要となってきます。
裂肛の手術は、この治り難くなった原因を取り除くことが目的の手術です。
渡邉医院では、側方内肛門括約筋切開術という方法で裂肛の手術をしています。この手術は、肛門縁から少し離れた(約1㎝ほど離れた部分)ところに
役1㎝ほどの皮膚切開を入れます。そこからメスを入れて、緊張の強くなった内肛門括約筋を切開して、柔らかく、十分に肛門が広がるように肛門の緊張を
とって元の状態に戻す手術です。緊張が極端に強くなった内肛門括約筋の緊張を正常な緊張、元の状態に戻すのが目的ですので、手術をして肛門が緩んで
しまうことはありません。また、皮垂や肛門ポリープがある場合は、これらも裂肛の治りを悪くするので、切除していきます。イメージは、裂肛になる前の
状態に肛門を戻してあげるという感じです。ですから、裂肛の手術では新しく肛門の中の肛門上皮に傷はつきませんし、極端に強くなってしまった内肛門括約筋
の緊張をとるので、手術が終わった後、最初の便が痛みが軽減して、楽に出ます。排便時の痛みが強い人ほど、術後の排便時の痛みは楽になっていきます。
肛門の手術は「痛い!」と思ている方が多いですが、裂肛の手術はその痛みをとることが目的です。
排便時の痛みが強く、そして排便後も痛みが持続する。そんな痛みでお悩みの方は、ぜひ一度肛門科を受診してみてください。毎日のことですので、しっかり痛みを
とり、治していきましょう。

投稿者: 渡邉医院

2018.09.17更新

肛門周囲膿瘍という病気があります。
肛門と直腸との間に肛門腺という分泌液を出す腺があるのですが、ここに細菌が感染して化膿していく病気です。炎症を起こし化膿していくと、膿は組織の弱いところ弱いところへと広がっていきます。表面に広がり、肛門の周囲がパンパンに腫れあがりすごく痛みが出たり、場合によっては奥のほうに広がり、肛門の表面にはあまり変化がないにも関わらず痛みがすごく強くなり、場合によっては38度以上の熱が出ることがあります。
このような場合は、急いで局所麻酔をして切開して膿を出さなければなりません。膿を出すことで、痛みはスッと楽になります。
この肛門周囲膿瘍は男性に多い傾向があります。渡邉医院でも10対1ぐらいの割合で男性に多いです。そして一人、肛門周囲膿瘍の患者さんが来られると、少なくても後二人、同じ日や近い日に肛門周囲膿瘍の患者さんが受診されます。
流行する病気ではないのですが、不思議です。
さて、肛門周囲膿瘍に対して局所麻酔をして切開して膿を出すのですが、入院する必要はありません。切開してすぐに帰宅して、帰宅後出血などがあるとこまりますので、1時間程度診療所で安静にしていただいたあと、出血がないか、痛みが楽になったかを診察してから帰宅してもらっています。
帰宅する際は、切開して膿がでていますので、痛みはすでに楽になっています。出血さえなければ、まだ残っている膿が早く出てしまったほうがいいので、家に帰って横になってねているのではなく、普段通りの生活を
送ってもらっています。切開して排膿した当日は、シャワーだけにしてもらっていますが、次の日からは通常通りに入浴もしてもらっています。
内服としては抗生剤と消炎鎮痛剤を5日間内服してもらっています。抗生剤は残った最近をやっつけるために内服してもらいますが、消炎鎮痛剤も痛みだけでなく、炎症もとってくれるので、5日間は痛みがなくなっても内服してもらっています。
肛門周囲膿瘍で次に皆さんが心配されるのは、肛門周囲膿瘍の後は痔瘻になって、痔瘻の根治術を必ずしなければならないのではないということだと思います。
肛門周囲膿瘍に対して切開排膿をして必ず全ての人が痔瘻になるわけではありません。渡邉医院で肛門周囲膿瘍に対して切開排膿をしたあと、その後なんの症状も出ない患者さんは70%です。肛門周囲膿瘍になったからと言って100%痔瘻になるわけではありません。症状がでない患者さんのほうが多いです。切開排膿後、痛みはないが膿が出続けるとか、腫れたり治まったりを繰り返すなどの症状が出た場合に初めて痔瘻という病名が付きます
肛門周囲膿瘍=痔瘻。100%痔瘻根治術が必要というわけではありません。
肛門周囲膿瘍はとても痛い病気です。もしも症状がでた場合は早く受診していただき、切開して膿を出すことが大切です。

投稿者: 渡邉医院

2018.09.17更新

9月になって、血栓性外痔核で受診される方が少し多いかなという印象があります。
血栓性外痔核は、肛門の外側の静脈に血栓が詰まって腫れて痛い病気です。
もともと、人間は立って歩く二足歩行なので、肛門の部分の血流は少し悪いです。そんなところにに、冷えたり、忙しかったり、疲れていたり、また寝不足だったり、ストレスがかかるとさらに血液の流れは悪くなってしまいます。
そして、ストレスがかかると血栓もできやすくなってしまいます。ストレスがかかると、血小板がくっつきやすくなり血栓ができやすくなります。そんないろんな条件が重なって、さらにそこに便の調子が悪くて排便の時にグッと頑張ったり、
重たいものを持ったりしてお腹にグッと力が入った時など、例えば引っ越しなどで重たい荷物を持ち上げたときなどに血栓が詰まって、血栓性外痔核になることがあります。
ただ、血栓性外痔核はもともと持っていたものが、悪くなっていたくなったのではなく、たまたま今まで話したような条件がそろって、お腹が力が入ったときに運悪く血栓が詰まったものです。少し違うのですが、指を挟んで血豆ができるとか、ぶつけて青く内出血して腫れて痛いのと同じようなものです。ですから、極端なことを言うと、グッと我慢していると、何もしなくても自然に治っていきます。
ですから、血栓性外痔核の治療は、基本的には手術などをする必要はなく、保存的に治療します。ぶつけて内出血して腫れて痛くても、手術をしなくても自然に治っていくのと同じです。でも、手術で血栓を取ることもあります。それは、一つは詰まって血栓が大きい場合です。親指よりも大きな血栓が詰まってしまうことがあります。大きいと溶けて治るまでに時間がかかります。もう一つは、血栓が詰まって痛みが強く、仕事にならない。さらに痛くて寝てもいられないという時です。この場合も局所麻酔をして血栓を取るのですが、ほっておいても自然に治る血栓性外痔核を手術でとって、その後痛いと意味がありません。血栓を取ると痛みはスッと楽になります。でも反対に言うと、どんなに大きくても、どんなに痛くても手術をしなくても、自然に治っては行きます。
では治療法ですが、血栓性外痔核の一番の症状は、腫れて痛いということです。これに対しては、腫れを取ると痛みがとれるので、腫れをとって痛みをとる消炎鎮痛剤の座薬を使うと痛みがとれ、楽になります。血栓は自然に溶けるのを待ちます。いつも診察の時、血栓性外痔核に対して消炎鎮痛剤の座薬を1週間分処方します。「座薬がなくなって痛みなど何か具合が悪いことがあれば、受診してくださいね。」と患者さんにお話しするのですが、たいていの場合、受診される患者さんはいません。1週間で血栓がすべてなくなることはないと思いますが、消炎鎮痛剤を使うことで痛みがとれ、血栓がだんだん小さくなっていくので、「後は自然に治るから大丈夫だ。」ということになるのだと思います。血栓性外痔核の場合はこれでいいと思います。
 患者さんに「また血栓性外痔核になりますか?」と聞かれることがあります。そんな時私はこう答えています。「今回、血栓性外痔核になったのでまたなる可能性はあります。では、今回血栓性外痔核になったのは初めてですか?初めてでしたら、こんな程度の頻度でしか起きませんよ。」と。
 血栓性外痔核は自然に治っていきますが、痛みがあります。これは消炎鎮痛剤の座薬で楽になります。痛いときは早めに受診していただき、痛みを早くとるといいと思います。

投稿者: 渡邉医院

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