肛門科医のつぶやき

2018.11.25更新

肛門の手術を行った後の経過で、とても大切なことは、術後の出血、疼痛、そして排便の管理です。この三つが、手術後とても大切なことだと考えています。
まず痛みです。
裂肛の術後の疼痛ですが、裂肛の手術は排便時の痛みをとることが一番の目的です。ですから、裂肛の手術をした後、排便時の痛みはスッと取れます。排便時の痛みが強かった患者さんほど、術後の排便時の痛みは楽になります。
痔瘻の場合は、どうしても排便時の痛みはあります。でも痔瘻の根治術を行った約60%の方は、術後最初の便の痛みはなかったと答えてられます。
どうしても排便時の痛みがあるのが、内痔核に対しての痔核根治術後の排便時の痛みです。ただ、普段は痛みがなく、排便時の痛みがあるのですが、術後7~10日目を過ぎると、排便時の痛みもスッと楽になります。また排便時の痛みの程度は、内痔核の切除個数にも関係しています。1か所の人、2か所の人、3か所の人を比較すると、1か所の人は2か所以上の人と比べるとずいぶん楽です。2か所と3か所の人を比較すると、排便時の痛みに差はありません。1か所ですむか、2か所以上になるかで排便時の痛みに差がでてきます。
次に出血ですが、
裂肛、痔瘻に対して手術をした場合は、術後24時間以内、特に術後3時間以内の早期出血がなければ、その後の出血で、麻酔をしてもう一度止血術をしなければならない出血はまずありません。
内痔核では、この術後24時間以内、特に3時間以内の出血以外に、術後7~10日目頃に内痔核の根部の動脈の根部を結紮した部分からの晩期出血があります。この晩期出血が起きる時期を過ぎると、再度麻酔をして止血しなければならないような出血はまずありません。
肛門の手術で一番患者さんにとっての不安が、この出血です。
さて、最後の排便の管理ですが、これが一番大切で、手術をして治った後でも一番大事なのが、この排便です。どうしても頑張っている時間が長かったり、便秘が続くとまた再発の可能性が出てきます。排便の調整が肛門疾患の発生、再発を防ぐのに最も大切だと思います。
肛門の手術の後は、どうしても「便をすると痛みがあるのでは?」「出血したらどうしよう?」と思うとどうしても排便することが怖くなり、便が出にくくなってしまうことがあります。この場合は、緩下剤を飲んで楽に便が出るようにしていくことが必要です。排便時の痛みが楽になり、出血が少なくなると、おのずと便の調子もよくなってきます。便の状態で、緩下剤を減らしていけばいいです。また、特に内痔核の手術をした場合、肛門の状態は正常ではありません。どうしても便の出方は悪くなると思います。傷が治り、正常の肛門の動きをするようになると、これもまたおのずと気持ちよく便が出るようになります。このように、排便時の痛みが楽になり、傷が治っていくまでは、必要に応じて緩下剤を使っていく必要があると考えます。
以上のように、肛門疾患の術後は、術後の出血、疼痛、そして排便の管理がとても大切になります。

投稿者: 渡邉医院

2018.11.25更新

 内痔核に対しての手術方法は、時代とともに変わってきました。
渡邉医院でも、祖父が渡邉医院を開設してからもうすぐ90年になります。祖父の時代、そして父の時代、そして私の時代と、時代とともに内痔核に対しての手術方法や治療方法は随分変わり、進歩してきました。
 まず、祖父の時代は、内痔核に対しての手術方法は、ブラーツ法という方法での手術だったようです。実際、祖父が手術をしているところを見たことはありません。父が祖父の手術に関して話している内容から推測して、祖父はブラーツ法だったと思います。
 ブラーツ法は脱出してくる内痔核を鉗子で挟み切除した後、創面を縫合するという手術方法です。今ではほとんどされていません。
 内痔核に対しての手術方法がガラッと変わったのが、父の時代です。ミリガンモルガン法と言って、現在行われている基本となる、結紮切除という手術です。私の父は、このミリガンモルガン法、結紮切除術を知って、「目から鱗だった。」と言っています。内痔核を根部まで剥離していき、内痔核の根部、動脈を結紮した後内痔核を切除するという手術方法です。現在の内痔核に対しての手術方法の基本となる手術術式です。肛門科をする以上、この結紮切除術はしっかりマスターすることが肛門科医となる必要最低限の条件だと思っています。
 この高位結紮切除術をさらに進歩させたものが、半閉鎖式です。内痔核を根部まで剥離して、結紮して切除した後の、傷が出来た肛門上皮を縫合して、肛門の外側のドレナージ創は残しておくという方法です。
 現在、私が行っている手術はこの高位結紮切除術・半閉鎖式です。その閉鎖方法を工夫したり、ドレナージ創をどう作るかなど、まだまだ改善するところがあると思っています。
 こういった根治術の変遷の中に、輪ゴム結紮法など、以前からある手術方法が内痔核の大きさや性状をみながら行われています。
 こういった内痔核を切除するといった手術方法の流れを大きく変えたのが、ジオンという痔核硬化剤の誕生です。硫酸アルミニウム・タンニン酸水溶液を内痔核に局注して、内痔核を縮小退縮させていく方法で、四段階注射法という方法で痔核硬化療法を行う方法です。これまで手術をすることで、どうしても肛門に傷を付ける、そういった治療方法から、内痔核に対して痔核硬化療法で、これまで手術をしなければ治らなかった内痔核を治すことが出来るようになりました。傷が出来ないので、患者さんにとってはいたみがなく、本当に楽な治療方法です。ただ、このジオンによる痔核硬化療法はどんな内痔核でも治すことができる万能の治療方法ではありません。ジオンによる痔核硬化療法で治る内痔核かどうかをしっかり判断して、適応を決めなければなりません。適応を間違えると、内痔核は治っていきません。また、痛みは伴いませんが、手術を治すところを注射で治す。注射した部分では、痛みはありませんがものすごい侵襲がかかっているということです。しっかりと経過を診ていくことが大切です。
 このように内痔核に対しての手術方法や治療方法は大きく変わり、進歩してきています
。でもそれぞれのメリット、デメリットをよく理解して、今ある内痔核を治すのには、どの治療法が最も適しているのかを、しっかり見極めていくことがとても大切で重要となってきます。
 自分が持っている内痔核がどんな内痔核か?そしてその内痔核を治すには、どの治療方法が最も適しているのかを肛門科医と相談しながらしっかり治していくことが必要だと思います。そういったいみからも医師としっかり話し、納得いく治療を受けてくださいね。

 

投稿者: 渡邉医院

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